心と身体の両方の健全のために
毎朝のお勤めで本堂に入り、そして実際にお経を唱え始めるまでの一連の作法、それは最近ほとんど無意識で始められるほど身についてきたのですが、実はこれ非常に意味のあることでして、これを行うことによる気持ちと身体の変化というのは本当に大きいものです。
まず本堂に入る際、邪を取り除く作法と文言を唱えます。そしてご本尊さまに礼拝を済ませ着座をした後に呼吸を整える作法に入ります。整える順番は吐く方から始まります。自分自身の悪い気や感情をすべて口から吐き出します。次にこの飛騨地域、特に位山の気を感じます。(なぜ位山かはまた別の機会にお話しします)その清浄な気を鼻から精一杯吸い込み、そしてその気を丹田に落とし込みます。そして、その丹田にて気の安定を感じたときに、最後は護身の作法を執り行います。口で文言を唱え、手に印を結びながら、業を断ち心と身体と言葉を清め、最後に心身防護の気を張ります。
僧侶はお勤めの際、およそこのような手順を踏んだうえで読経を行います。それはこれから瞑想に入るのと、ちょうど同じような状態になります。
グッと気持ちが入り、まさに「自然との一体化」を目指すといった具合です。
参加者の変化
ところで話は変わりますが、最近朝のお勤めではほとんどと言っていいほど、どなたかにご一緒して頂いております。わたし一人というのも良いのですが、やっぱりちょっと寂しいものなので、だれかに時間を共有して頂けるというのは正直に申しまして、とても嬉しいです。
実は2週間ほど前からYouTubeを利用してのライブ配信も始めました。そのライブ配信ではいつも2~3名くらいの方にご覧頂いております。
https://www.youtube.com/channel/UC3UptUl2cr70mXc5SSDe-yQ
そして、実際にお越しになられている方というのは、現在は旅行が自粛されている期間ですので、いわゆる非番のスタッフをはじめ近所の方、観光難民のようになって高山に滞在している外国人の方、そしてリモートワークや企業研修で来られた方々となり、こういった皆さまが代わる代わるいらしております。この1か月で朝のお勤めの風景はこれまでの通常とはだいぶ異なってきております。
ただ、今現在この不安な感覚に覆われてしまっている社会の中で、皆さまが異口同音に求めていらっしゃるのは「心の平穏」です。心の不安定さは身体の免疫力までも低下させます。我々に必要なことは、いかに心と身体を普通の状態に留められるかということです。そういった意味では、規則正しい生活こそがまずは最も大切となります。
現在外出は制限されていますが、しっかりと食事を取り睡眠をし、家族・同僚・友人とも会話をして、できる限り普段と変わりなく過ごします。そして、その中にこの朝のお勤め=祈りという習慣を加えて頂きたいのです。これは人々が自然との感覚を取り戻し、スッと心を落ち着かせることのできる一つの新しいカギとなるはずです。日常社会生活の部分から自身を一刻だけ切り離して、一人一人がその自然の力との関係性を作り上げる。普段から「心と身体の両方の健全を保つ」ためにも、これから先の未来においてこういった機会をご自身で意識して持つことは、必ず必要なことになると私は感じます。
僧侶の行う朝のお勤め直前の作法は、そういった気持ちをしっかり保たせるためのスイッチのようなものなのかもしれません。
合掌