デジタルノマドの受け入れは、海外インバウンドのみならず、日本国内の都市と地方の双方に生活拠点を持つ二地域居住者の受け入れ推進にも繋がり、人口シェアによる地域創生も期待できます。
那智勝浦町役場主催、新たな観光誘致の取り組み「デジタルノマド」を学ぶ研修会
国際的なデジタルノマドワーカーは、現在、全世界で3,500万人程度存在するといわれており、現地の雇用を奪わず、地域経済にお金を落とす貴重な存在です。2020年以降、多くの国がデジタルノマドワーカー向けに、滞在国での就労関係の有無に関わらず、6か月~数年間といった長期間滞在できる「デジタルノマドビザ」を発行してます。日本においても、2024年春からデジタルノマドビザが発給開始となりました。また、国交省では、都市と地方の双方に生活拠点を持つ「二地域居住」の推進に向け、人の往来を通じ、地域活性化を目的とした「広域的地域活性化基盤整備法」の改正を目指すなど、新たな制度の創設も進んでいます(2024年5月15日改正法が成立)。
研修会には、町役場のほか、青年会議所、那智勝浦観光機構、和歌山県東牟婁振興局地域振興部企画産業課、ほか観光宿泊事業者が参加しました。研修後のアンケートでは、満足度が5点満点中、4.3点と高い評価を得ています。
研修参加者の声:「長期滞在者増で、宿泊業者は安定した収入が得られる」
長期滞在者が増えることにより、宿泊業者は安定した収入を得られると期待が寄せられており、長期滞在者の増加への関心が高まっています。デジタルノマドワーカーの増加には、仕事環境やコミュニティスペース、コミュニティマネージャーなど受入れのためのハード・ソフトの環境面については取り組みが必要という声が集まりました。地域理解と環境整備がともに進んでいくことが必要とされています。<開催概要>
- 日時:2024年2月13日(火)13:00~14:30
- 会場:那智勝浦町役場2F 大会議室
- 対象:町内外の訪日外国人やデジタルノマド誘致に関心のある観光関係事業者
- 内容:デジタルノマドビザの最新整備状況や他国の状況、日本のデジタルノマドの今後の可能性について など
- 講師:細川哲星(株式会社シェアウィング地方創生室長、株式会社ニューソンアンドカンパニー代表取締役、一般社団法人デジタルノマド協会幹事)
- 主催:那智勝浦町役場観光企画課(令和5年度総務省地域魅力化アドバイザー派遣事業)
- 企画・協力:株式会社シェアウィング
3500万人いるデジタルノマド、2035年までに約10億人、日本への経済効果は5兆円
「The Economist」誌によれば、「2035年までに約10億人のデジタルノマドが誕生」すると言われています。2035年に、世界のデジタルノマド総人口のうち、約2%※が訪日すると仮定した場合、数兆円単位の経済効果を見込むことが可能です。※世界の海外旅行者総数に占める訪日外国人旅行者の割合(2019年実績)
(試算例)
【ノマドの訪日客数】2,000万人×【旅行者消費単価】8,400円/日(マデイラ島実績)×【平均滞在日数】30日(仮定)=約5兆円出典:「ワーケーションの普及・定着に向けた 観光庁の取り組み」(観光庁、2024年1月)
https://japan-telework.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2024/01/12_240112_kankoucyou.pdf
デジタルノマドへの魅力化を通じて、地方への人の流れの創出・拡大
デジタルノマド向けの新しい働き方に対応した受け入れ環境の整備は、海外層のみならず、国内デジタルノマドワーカーへの魅力化であり、2地域居住潜在層へのアプローチとなります。特にデジタルノマドの滞在先判断において、コワーキングスペースだけでなく、交流施設やコミュニティ、また、キッチン付きの滞在施設の有無が重要視されており、「Temple Hotel大泰寺」ではキッチン付きの宿坊、本堂などのWi-Fi強化など、受入環境整備を行いました。出典:「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定(国土交通省、2024年2月9日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/kokudoseisaku01_hh_000205.html