昔大きな機屋があって、大勢の奉公人は夜も遅くまで夜なべ仕事をしていた。この機屋の窓辺に毎晩大入道が出るので、気味悪がって家中の騒ぎとなった。ある晩鉄砲で撃った。確かな手ごたえがあったので、さっそく行ってみると影も形もなかった。すっかり肝をひやした家人はろくろく寝ずに夜明けを待って調べてみると、土に点々と血の流れた跡があり、その跡をつけて行くと観音院の庭で消えてしまった。
ある夜この家の主人の夢まくらにお地蔵様が現れ「わたしが毎夜そなたの家の外に立っているのは、そなたの家を守護するためだ。わたしは野天に立っているため衆人の信仰もない。大勢の人々を守護するためお堂を建ててほしい。その時は何日なりと日を限って願かけをすれば必ず願望をかなえよう。」とお告げがあった。主人はさっそく村人にこの話をして、大勢の人の浄財により今のところへお堂を移して盛んな法要と祈願をした。不思議にもお地蔵様の肩には鉄砲玉の跡が残っているという。日限地蔵尊のご利益は真摯な信仰によってだれでも得られる。